質的研究のコード化・カテゴリー化を体系的に解説|実践ガイド

テーマ分析(主題分析)とコード化・カテゴリー化の関係

time 2026/02/09

主題分析(テーマ分析)とは何か。漠然と言えば、コード化・カテゴリー化をして、それを分析することである。

ただし、注意点がある。

カテゴリーを積み上げればテーマになるわけではない。そこで止まると「整理」で終わる。テーマは、研究者の解釈によって見出される「意味のパターン」だ。

コード化・カテゴリー化は「整理」

Braun & Clarkeの6段階モデルは、テーマ分析の標準的な手順として知られている。しかし、この手順を「コードを作り、それをカテゴリーにまとめ、カテゴリーを束ねてテーマにする」という単純な積み上げだと理解すると、落とし穴にはまる。

コード化・カテゴリー化は、データを整理する作業だ。「こういう発言がありました」「こういう傾向がありました」という記述的整理。これ自体は重要な作業だが、これだけでは「分析」にならない。

テーマはカテゴリーの「上位概念」ではなく「意味のパターン」

テーマとは、カテゴリーの上位概念ではない。

Braun & Clarke自身も後年の論文(2019など)で強調しているが、テーマは「カテゴリーの寄せ集め」ではなく、データを貫く意味のパターンだ。

研究者が「このデータは何を意味しているのか」と問い、解釈的に関与することで、初めてテーマが見出される。

具体例で考える

職場ストレスに関するインタビューを分析したとする。

コード化・カテゴリー化の結果、以下のカテゴリーが出てきた。

  • 業務量の多さ
  • 人間関係の難しさ
  • 評価への不満

これを並べただけでは「整理」だ。「職場ストレスには、業務量・人間関係・評価の3つの要因がありました」という記述的報告にとどまる。

ここから「分析」に進むには、これらのカテゴリーを貫く意味のパターンを見出す必要がある。

たとえば、「組織への信頼の揺らぎ」というテーマを見出したとする。

業務量の多さは「自分の限界を組織が理解していない」という不信。人間関係の難しさは「助け合える関係が築けていない」という孤立感。評価への不満は「正当に見てもらえていない」という疎外感。これらを貫くのは、組織に対する信頼の揺らぎだ。

このように、カテゴリーを横断して「意味のパターン」を解釈することで、テーマが生まれる。

「整理」と「分析」の違い

整理してまとめると、以下のようになる。

  • コード化:データにラベルを付ける → 整理
  • カテゴリー化:コードをまとめる → 整理
  • テーマ化:意味のパターンを解釈する → 分析

コード化・カテゴリー化は「手段」であり、テーマは「解釈の結果」だ。

手段で止まると、整理で終わる。解釈に進んで初めて、分析になる。

「インタビューのテーマ」と「分析で見出すテーマ」は違う

ここで一つ疑問が浮かぶかもしれない。

半構造化インタビューや構造化インタビューでは、インタビューガイドを作り、あらかじめテーマを決めてからインタビューに入る。そうであれば、主題分析は蛇足ではないか?

この疑問には、「インタビューのテーマ」と「分析で見出すテーマ」が異なることを理解する必要がある。

インタビューのテーマ(研究テーマ)

「何について聞くか」の枠組み。たとえば「職場ストレスについて聞く」と決めること。これはインタビューの方向性であり、問いの設定だ。

分析で見出すテーマ

データから浮かび上がる「意味のパターン」。たとえば「組織への信頼の揺らぎ」。これは解釈の結果であり、答えの意味だ。

「職場ストレスについてインタビューする」と決めても、そこから何が見出されるかは事前には分からない。「業務量」「人間関係」「評価」が出てくるかもしれないし、予想外のことが出てくるかもしれない。それらを貫く「意味のパターン」は、分析して初めて見出される。

インタビューガイドで決めるのは「問いの方向」であり、主題分析で見出すのは「答えの意味」だ。だから蛇足ではない。

帰納的アプローチと演繹的アプローチ

ただし、例外的な場合もある。

テーマ分析には、帰納的アプローチと演繹的アプローチがある。

帰納的アプローチでは、データから浮かび上がるテーマを重視する。事前に枠組みを決めず、データに忠実にテーマを見出していく。ここまで説明してきたのは、主にこのアプローチだ。

演繹的アプローチでは、既存の理論や枠組みに基づいてテーマを探す。事前に「この観点でデータを見る」と決めておき、その枠組みに沿ってデータを整理・検証する。

演繹的アプローチの場合、「テーマを見出す」というより「テーマに沿って検証する」に近くなる。この場合は、インタビューのテーマと分析のテーマが重なることもある。

どちらが正しいというわけではない。研究目的によって使い分ける。多くの研究では両者を組み合わせて用いる。

まとめ

主題分析(テーマ分析)は、コード化・カテゴリー化をして分析すること。この理解でおおむね正しい。

ただし、カテゴリーを積み上げればテーマになるわけではない。テーマは「カテゴリーの上位概念」ではなく、「データを貫く意味のパターン」だ。

コード化・カテゴリー化で止まると「整理」で終わる。研究者が「この現象は何を意味しているのか」と問い、解釈的に関与することで、初めて「分析」になる。

また、「インタビューのテーマ」と「分析で見出すテーマ」は異なる。インタビューガイドで決めるのは「問いの方向」であり、主題分析で見出すのは「答えの意味」だ。

この記事を書いた人

タイナーズ 代表 西山勝之

タイナーズの代表者。2006年以来、議事録作成は元より、整文、要約、質的研究素材づくりなど、広く言語に関わる業務の陣頭指揮を執っている。言語学を応用した研究領域の大学院既卒者(修士)。表現のニュアンスを大切にしている。