2026/01/22
トライアンギュレーション。質的研究の用語として聞くと、難しそうに感じるかもしれない。
しかし、本質はシンプルだ。わかりやすく言えば「三人寄れば文殊の知恵」の考え方を、研究に応用したものと理解すればいい。
日常でやっていること
何か物事を決めるとき、私たちは自然と複数の視点を求める。
- 一人の意見より二人の意見
- 二人の意見より三人の意見
- Aの領域の意見だけでなく、Bの領域の意見も聞く
- ABだけでなく、Cの領域も含める
なぜそうするか。一人の視点、一つの領域だけでは、見落としがあるからだ。複数の視点から見ることで、判断の精度が上がる。
これは日常的にやっていること。特別なことではない。
トライアンギュレーションの本質
トライアンギュレーションは、この日常の知恵を研究に体系的に取り入れたものだ。
「三角測量」になぞらえた言葉で、複数の地点から測ることで正確な位置を特定する、という発想から来ている。研究でも同じ。複数の視点から見ることで、結果の妥当性を高める。
質的研究では、これを4つの種類に整理している。
- データ源のトライアンギュレーション:複数のデータ源から情報を得る(例:患者と医療者の両方に聞く)
- 研究者のトライアンギュレーション:複数の研究者で分析する(例:一人ではなく三人でデータを読む)
- 理論のトライアンギュレーション:複数の理論的視点から検討する
- 方法のトライアンギュレーション:複数の方法を併用する(例:インタビューと観察を組み合わせる)
分類は4つあるが、どれも根底にある発想は同じ。複数の視点から見ることで、見落としを減らすということだ。
「三人寄れば文殊の知恵」との対応
「三人寄れば文殊の知恵」は、もともと人数についてのことわざだ。一人で考えるより、三人で考えたほうが良い知恵が出る。
トライアンギュレーションは、これを「人」だけでなく「領域」や「方法」にも広げている。
- 人を増やす → 研究者のトライアンギュレーション
- 情報源を増やす → データ源のトライアンギュレーション
- 視点(理論)を増やす → 理論のトライアンギュレーション
- やり方を増やす → 方法のトライアンギュレーション
どれも「一つより複数」という同じ原理だ。
なぜ精度が上がるのか
一つの視点には、必ず死角がある。
インタビューだけでは、言葉にならない行動は見えない。患者だけに聞けば、医療者の視点は抜け落ちる。一人で分析すれば、その人のバイアスが入る。
複数の視点を組み合わせることで、一方の死角を他方が補う。結果として、真偽の精度が高まる。
これは「正解が見つかる」という意味ではない。「見落としが減る」「偏りが緩和される」という意味だ。
まとめとして
トライアンギュレーションは、難しい概念ではない。
「三人寄れば文殊の知恵」の考え方を、人だけでなく、データ源・理論・方法にも広げたもの。複数の視点から見ることで、見落としを減らし、判断の精度を高める。
日常でやっている当たり前の知恵を、研究に体系的に取り入れたもの。そう理解すれば、トライアンギュレーションは身近になる。

