質的研究のコード化・カテゴリー化を体系的に解説|実践ガイド

トライアンギュレーションとは「三人寄れば文殊の知恵」の研究版

time 2026/02/15

トライアンギュレーション。質的研究の用語として聞くと、難しそうに感じるかもしれない。

しかし、本質はシンプルだ。わかりやすく言えば「三人寄れば文殊の知恵」の考え方を、研究に応用したものと理解すればいい。

日常でやっていること

何か物事を決めるとき、私たちは自然と複数の視点を求める。

  • 一人の意見より二人の意見
  • 二人の意見より三人の意見
  • Aの領域の意見だけでなく、Bの領域の意見も聞く
  • ABだけでなく、Cの領域も含める

なぜそうするか。一人の視点、一つの領域だけでは、見落としがあるからだ。複数の視点から見ることで、判断の精度が上がる。

これは日常的にやっていること。特別なことではない。

トライアンギュレーションの本質

トライアンギュレーションは、この日常の知恵を研究に体系的に取り入れたものだ。

「三角測量」になぞらえた言葉で、複数の地点から測ることで正確な位置を特定する、という発想から来ている。研究でも同じ。複数の視点から見ることで、結果の妥当性を高める。

質的研究では、これを4つの種類に整理している。

  • データ源のトライアンギュレーション:複数のデータ源から情報を得る(例:患者と医療者の両方に聞く)
  • 研究者のトライアンギュレーション:複数の研究者で分析する(例:一人ではなく三人でデータを読む)
  • 理論のトライアンギュレーション:複数の理論的視点から検討する
  • 方法のトライアンギュレーション:複数の方法を併用する(例:インタビューと観察を組み合わせる)

分類は4つあるが、どれも根底にある発想は同じ。複数の視点から見ることで、見落としを減らすということだ。

「三人寄れば文殊の知恵」との対応

「三人寄れば文殊の知恵」は、もともと人数についてのことわざだ。一人で考えるより、三人で考えたほうが良い知恵が出る。

トライアンギュレーションは、これを「人」だけでなく「領域」や「方法」にも広げている。

  • 人を増やす → 研究者のトライアンギュレーション
  • 情報源を増やす → データ源のトライアンギュレーション
  • 視点(理論)を増やす → 理論のトライアンギュレーション
  • やり方を増やす → 方法のトライアンギュレーション

どれも「一つより複数」という同じ原理だ。

なぜ精度が上がるのか

一つの視点には、必ず死角がある。

インタビューだけでは、言葉にならない行動は見えない。患者だけに聞けば、医療者の視点は抜け落ちる。一人で分析すれば、その人のバイアスが入る。

複数の視点を組み合わせることで、一方の死角を他方が補う。結果として、真偽の精度が高まる。

これは「正解が見つかる」という意味ではない。「見落としが減る」「偏りが緩和される」という意味だ。

まとめとして

トライアンギュレーションは、難しい概念ではない。

「三人寄れば文殊の知恵」の考え方を、人だけでなく、データ源・理論・方法にも広げたもの。複数の視点から見ることで、見落としを減らし、判断の精度を高める。

日常でやっている当たり前の知恵を、研究に体系的に取り入れたもの。そう理解すれば、トライアンギュレーションは身近になる。

この記事を書いた人

タイナーズ 代表 西山勝之

タイナーズの代表者。2006年以来、議事録作成は元より、整文、要約、質的研究素材づくりなど、広く言語に関わる業務の陣頭指揮を執っている。言語学を応用した研究領域の大学院既卒者(修士)。表現のニュアンスを大切にしている。