2025/09/10
カテゴリー名を考えるとき、多くの人は「内容を正しく表しているか」を気にします。
しかし実際には、カテゴリー名は内容を説明する前に、読み手の解釈と行動を先回りして決めてしまう力を持っています。
とくに影響が大きいのが、品詞です。
同じテーマでも、名詞なのか、動詞なのか、あるいは「調整」「対処」といった介入語なのかで、そのカテゴリーが「何を扱う棚なのか」は大きく変わります。
同じ題材でも、名前が違うと別の棚になる
たとえば、次の3つのカテゴリー名を並べてみます。
- 不安
- 不安になる
- 不安の調整
いずれも「不安」を扱っているように見えますが、
この3つが指し示す内容や、読者に期待される振る舞いはまったく同じではありません。
「不安」という名前を見たとき、人は概念・状態・性質を思い浮かべます。
一方、「不安になる」は出来事や状況を想起させます。
「不安の調整」となると、そこには方法・スキル・介入があるはずだ、と自然に期待されます。
つまり、カテゴリー名は単なるラベルではなく、
「この棚では、何を理解し、何を語り、何をすべきか」を暗黙に指定しているのです。
名詞化が生むもの:状態や概念としての「不安」
名詞で作られたカテゴリーは、対象を一つの状態や概念として固定化する力を持ちます。
「不安」というカテゴリで集まりやすいのは、次のような内容です。
- 不安とは何か、という定義や説明
- 不安の種類や特徴
- 他の概念(恐れ、心配など)との違い
これは知識整理や概念理解には向いています。
一方で、名詞化されたカテゴリーは、重く、ラベル的に受け取られやすいという側面もあります。
読み手によっては、「不安という属性を自分が持っている」という自己理解につながり、
そこから先の行動が見えにくくなることもあります。
動詞化が開く視点:出来事としての「不安になる」
「不安になる」という動詞形は、視点を状態そのものではなく、起こり方に向けます。
このカテゴリで集まりやすいのは、たとえば次のような情報です。
- どんな場面で不安になるのか
- 直前に何が起きていたのか
- 不安になったあとの行動や反応
ここでは、不安は固定された性質ではなく、
条件によって立ち上がる出来事として扱われます。
そのため、状況比較やパターン認識、振り返りとの相性がよく、
「いつもこういうときに不安になる」といった語りが自然に生まれます。
「調整」「対処」が含意するもの:介入としての不安
「不安の調整」「不安への対処」といった表現は、
名詞に操作や介入を示す語を組み合わせた形です。
この命名が示すのは、「不安は扱える対象である」という前提です。
その結果、次のような内容が期待されます。
- 具体的な方法やスキル
- 手順、コツ、練習
- 今すぐできる行動
実践的で有用な一方、この型は主体と責任を個人側に強く引き寄せるという特徴もあります。
状況によっては、「調整できないのは本人の問題」という含意を生みやすく、
文脈を選ばずに使うとズレが生じることもあります。
カテゴリー名は、読者の行動を設計している
ここまで見てきたように、品詞の違いは言い換えを表しているわけではありません。
カテゴリー名は、
- 何を問題として扱うのか
- 誰が主体なのか
- 時間軸は状態なのか、出来事なのか、プロセスなのか
- 読者に何を期待しているのか
といった前提を、説明なしで読み手に渡してしまう設計要素です。
だからこそ、カテゴリー名を決めることは、
「どう分類するか」ではなく、
「どう理解され、どう使われたいか」を決める行為になります。
よくあるズレと失敗パターン
品詞設計が曖昧なまま進むと、次のようなズレが起きがちです。
- 概念整理のつもりが、介入を期待されてしまう
- 状況を集めたいのに、定義論ばかり集まる
- 実践カテゴリなのに、抽象的な話が混ざる
多くの場合、原因はカテゴリ名と、中に入れたい情報の型が一致していないことにあります。
命名時のチェックポイント
カテゴリー名を決めるとき、次の点を一度確認すると、ズレを防ぎやすくなります。
- これは状態・出来事・介入のどれを集めたい棚か
- 読み手はこれを概念・体験・タスクのどれとして受け取るか
- 主体や責任が、意図せず一方に寄っていないか
- 中に入る内容の粒度と合っているか
品詞を意識するだけで、
カテゴリー設計の精度は大きく変わります。
おわりに
カテゴリー名は、分類の結果ではなく、解釈の入口です。
名詞にするのか、動詞にするのか、介入語を含めるのか。
その選択は、読み手の理解だけでなく、行動や感情の向きまで左右します。
内容を書く前に、
「この名前を見た人は、ここで何をすると思うか」
を一度立ち止まって考えてみると、
カテゴリー設計はより意図的で、扱いやすいものになります。

